GW前後で2週間ほどの休暇をいただき、アメリカ、カリフォルニア州のヨセミテ国立公園へ行ってきました。

目的はもちろんロッククライミング。ヨセミテはいつの時代も世界中のクライマーにとっての憧れの地ですね。

エルキャピタン。およそ1,000mの岩壁。花崗岩の一枚岩としては世界一の大きさ
THE NORTH FACEのブランドロゴでおなじみのハーフドーム(2682m)

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ヨセミテでの生活

ヨセミテへの移動はサンフランシスコから向かうのが最も一般的なようです(ヨセミテまで車で4〜5時間)。またはヨセミテに程近いフレズノという街や、サンノゼ、ロサンゼルスなどからも行くことができます。
成田空港~サンフランシスコの移動はZIP AIRを利用しました。LCCなので30㎏の預け入れ手荷物追加料金含め、チケットは1人¥18万ほど。LCCとはいえ、JALの子会社というだけあって機内は比較的快適でした。

空港でレンタカーを借りて移動します。3人なのでSUV(トヨタのRAV4)にしました。今回はショートルートや日帰りマルチメインでしたが、全員100ℓほどの大型ザックいっぱいの荷物。仮に4人以上になるとRAV4では確実にキャパオーバーでした。

アメリカは右側通行だったり、車線が多すぎたり、赤信号で右折可ルールがあったりと交通事情は日本とだいぶ異なるので、特に最初のうちは慎重に運転した方がいいでしょう。サンフランシスコ市内は朝夕はかなり渋滞するので注意。ヨセミテへの移動距離は長いですが、ガソリンスタンドは随所にあります。また、アメリカでは多くのガソリンスタンドにはコンビニなどが併設されています。

アメリカのスーパーといえばウォルマート!キャンプ生活に備えて、生鮮食品以外は買い出ししておきました。

ウォルマート。巨大な店舗が至る所にある。

ヨセミテ内にもスーパーはあります。やや割高ですが、品揃えはかなり豊富で買い忘れがあっても生活用品はだいたい揃います。さらにクライミング用品店やフードコート、ピザ屋、スターバックス等いろいろあって、長期滞在でも不自由なく生活できそうです。

Welcome Center隣のVillage Store。
Curry Villageのマウンテンショップ。
すこし割高だがロープやギア類も一通り揃いそう。クライミングシューズのラインナップは少ない。

ヨセミテ渓谷内は、クライマーが多く集まるCAMP4をはじめとするいくつかのテントサイトやCurry Village、Housekeeping Campにある常設テント、リゾートホテルと、さまざまな宿泊手段がありますが、私たちは今回のヨセミテ滞在期間中はHousekeeping Campを利用しました。

テントは簡素ですが、とても快適。期間中は何度か雨に降られましたが気にならず。食料品などの匂いのするもの(リップクリームや歯磨き粉も!)はクマが寄ってくるので、フードロッカー内にすべて収納します。食事は基本的に自炊でした。日本のキャンプ場のように炊事場はないですが、洗い物はトイレの外にあるシンクで出来ます。水は近くの水場から汲んでくる形なのでポリタンクやプラティパスは必要です。

朝夕食は自炊。パスタやアヒージョ、トルティーヤなど適当に。日中の行動食はスニッカーズやナッツなど。

Housekeeping内にも小さめのショップはありますが、買い出しは基本的にYosemite Villageのスーパーへ行きました。Housekeeping内のコインランドリーは$3で利用可能。乾燥機もありました。そしてシャワールームは無料!(21:30まで。あさは7:00~利用可能)。コストを抑えつつ快適さも重視したい方はHousekeepingでのキャンプ生活がおすすめです。

天気については、年によって状況は違うようですが、GW前後は気候が安定しないことが多いようです。実際私たちが到着した日の前の晩は雪がかなり降ったようで、気温もかなり下がっていました。初日以降は、にわか雨やゲリラ雷雨に降られたりもしましたが、クライミング自体は毎日特にストレスを感じず楽しめました。近年はかつてベストシーズンと言われていた10月でも30℃を超える日も珍しくないことから、春のシーズンもねらい目かもしれないですね。(ビッグウォールは急な雷雨などの恐れがあるから微妙かも。。)この時期のクライマーは比較的少ない印象でした。ハイカーや一般観光客の出入りはかなり多かったです。

突然の雷雨も...雹が凄かった。

気温はCookie Cliffなどの陽当りの良いエリアは、気温は20℃弱でも半袖で十分すぎるくらい(長いルートだと熱中症気味に…)でした。一方、渓谷内は風が抜けるので、風に吹かれると体感温度は一気に下がる感じでした。朝晩はかなり冷え込み、日によっては真冬の防寒対策が必要です。乾燥しているので、マスクやハンドクリーム、のど飴などを持参して正解でした。天気予報に関してはiphoneのデフォルトの天気アプリが正確だったように思います。

サンフランシスコ市内にあるアウトドア用品店REI。REIは店舗によってはクライミング用品ほとんど無かったりするが、ここは品揃え豊富。

ギアに関しては、カムは3人で2セットずつ持参しました。日本に比べて30~50m程度の長いルートが多いので、ヨセミテ初心者はプロテクションは多めの方が良いと思います。オフセットカムがあった方が良いと聞いたが、今回は使用しなかった(ピトンスカーにはトーテムカム効めるなどした)。ロープについては80mロープがあると、40~45m程度のルートまではロワーダウンできるので非常に便利(実質必須かも…)。

登った主なルート

(★=ルートの面白さを示す。★★★★が最高 ※筆者の勝手な感想で)

The Nutcracker [5.9/5ピッチ(152 m)] ★ @Ranger Rock

ヨセミテで最もポピュラーなルートのひとつ。アプローチは駐車場から数分。傾斜はないが、ツルツルで怖い(ヨセミテは花崗岩だが、氷河で削られてできた&数多の人が登って磨かれており、フリクションに乏しいことが多い)。
残置支点はほぼ抜かれており、完全なトラッドクライミングが楽しめる。フィンガージャムがよく決まると思ったらピトンスカー(ハーケンが抜かれた跡)だった。このルートを最初に登っておくと、ヨセミテのクライミングの特徴やグレード感が何となく分かるはず。

After Six [5.7/6ピッチ(182 m)] ★ @Ranger Rock

Nutcrackerの近くにある。クマよけフードロッカーが取りつきの目印。Nutcrackerはすこし嫌らしいが、こちらは登りやすいので初心者におすすめ。初登者はパタゴニアやBlack Diamondの創業者で知られるイヴォン・シュイナード。

Outer Limits 5.10b ★★★ @Cookie Cliff

ヨセミテの5.10代No.1クラックとの呼び声もある有名ルート。40m近くある快適なオフセットクラックを登る。意外とガタガタしてカムが決めにくい所があったり、終了点がクラック途中のやや中途半端な位置にあったりする。2ピッチ目含めてリンクしてもいいかも。登られて磨かれすぎて、下から見上げると濡れているように見える。

Cookie Monster 5.12a ★★★ @Cookie Cliff

日本ではあまりないようなエンデュランス系レイバックルート。日本にあったら5.12aの代表ルートになっていそうな感じの三つ星ルート。Outer Limitsのすぐ隣にある。他にもCrack a Go GoやTwilight Zoneなど、この辺りは有名ルートが密集しています。

New Diversions 5.10a ★★★★ @New Diversions Cliff

5.9くらいのワイドクラックを登った後の10mほどは、特徴的なノブ(突き出ている岩)を使ってのフェイスクライミングだが、ボルトは1本しかない。どうやってプロテクションをとるか...。パズルのようなムーブの組み立て、普通のクライミングではまずやらないプロテクションワークなど、40mのスケールにクライミングの面白さが凝縮されたような凄いルート。自分が過去登ったすべてのルートのなかでもベストルートのひとつだった。体感グレードは5.10後半~11aくらい?。

Separate Reality 5.11d ★★★★ @Above the Cookie

世界で一番有名なクラックルートのひとつ。道路の脇道を5分くらい下って20mくらい懸垂下降して取りつく。知名度にふさわしい面白さ。ルーフ部分は完全に180°だが、途中までは足も手もハンドジャムが非常に良く効く。核心は抜け口付近。現代のボルダリングジムの3級くらいでありそうな楽しい逆立ちムーブ。ルーフなのでギアの回収が面倒。たぶんロワーダウンで回収するのが一番良いと思う。

Freeblast 1st pitch 5.10c ★★★ @El Capitan

世界最大の1枚岩でもある巨大なエルキャップの基部も素晴らしいショートルートの宝庫である。この人がフリーソロ(ロープを使わないで登る)したことでも有名なFree Rider [30ピッチ/1000m]の最初の1ピッチ目。いきなり50m近いスケール!ダブルフィンガークラックをうまく使って登るがツルツルで怖い。1ピッチ目だけやって既にフリーソロされたことが信じられない。マイクロカム3セットほど持って行って良かった。80mロープでもギリギリロワーダウン可。

サンフランシスコ観光

せっかくアメリカに来たので、ヨセミテ生活の後の余った時間でサンフランシスコ観光もしました。サンフランシスコといえばゴールデンゲートブリッジ!世界で一番有名な橋のひとつですね。

橋は徒歩または自転車なら無料で渡ることができます。橋長は2737メートルもあるので、中央付近で引き返しました..。

ウェルカムセンター近くにあるBattery Lancaster。ここは大戦中は砲台として使われていた所で、現在はゴールデンゲートブリッジの歴史や構造について学ぶことができます。橋梁点検に従事している身としては非常に興味深い内容でばかりです。

手前にみえるリングを引っ張ることによって、主塔の高さごとのケーブルの張力の違いを体感できます(主塔が高いほど張力は小さくなる)。

左が横構なし。右が横構あり。

こちらは下横構の有無によって捻じれの違いを体感できます。こうして自分で体験してみると各部材の特徴や役割をリアルに実感できますね。

瀬戸大橋との姉妹関係を示した記念碑も。

橋の上からの景色。サンフランシスコのダウンタウンや、有名なアルカトラズ刑務所も望めます。